本の覚書

本と語学のはなし

『富井の古文読解をはじめからていねいに』


●富井健二『富井の古文読解をはじめからていねいに』(東進ブックス)
 古典文法から実際の古文読解への橋渡しをしてくれる本。
 第1部ではセンテンスを扱う。古文では1つのセンテンスの中で主語が平気でころころ変わることがあるが、助詞や敬語に着目すれば、主語が同一なのか転換したのか、かなりの程度判断することができる。
 第2部では現代では想像しにくい古文時代の常識を教えてくれる。通い婚の実態とか病気になったら加持祈祷するか出家するかであるとか。
 第3部はジャンル別の読み方のこつ。試験の際に先ずやるべきことは、説話、物語、日記、随筆のいずれからの出題であるか特定することだという。
 なかなか面白かったので、同じ著者の『古典文法』も昨日買ってきた。


 私は高校1年の夏に独力で古典文法を学び終えると、その後はけっこう盛んに岩波文庫の黄帯を読んでいた。思い出せるだけでも『古事記』『竹取物語』『伊勢物語』『土佐日記』『和泉式部日記』『更級日記』『徒然草』『方丈記』『奥の細道』『王朝秀歌選』などなど。しかし、全部理解できたわけではない。今思うと、解釈できなかったところは、圧倒的に主語の転換について行けてなかった部分である。あの頃この参考書があったら、ひょっとしたらもっと古文にのめり込んでいたかもしれない。
 今は文語で書かれたものというと道元しか読まないが、これは学校の古文とは全くの別物である。なんだか再び古文らしい古文を読みたくなってきた。そして、高校生に古文を教えることもできるような気がしてきた。