本の覚書

本と語学のはなし

『百年の孤独』


G・ガルシア=マルケス百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)
 ストーリーを簡単に要約することはできない。マコンドという町の建設から滅亡にいたるまでの、ブエンディア家の物語。その間、6代もしくは7代(最後に産まれるのは甥と伯母の子である)が同じ名前と似たような性格を受け継ぎ、段々と没落していく。池澤夏樹の『世界文学を読みほどく』(新潮選書)に「『百年の孤独』読み解き支援キット」が付録として載っているので、時間がないけどもっと知りたいという人はそれを読むといいかもしれない。
 ブームをやり過ごしていたため、南米文学のマジック・リアリズムは初体験になる。通常の小説のルールとは異なる民話的文化の中で育まれたストーリーテラーが、神の視点から語る超自然のリアリズムである。南国の豊穣さ、ラブレーのごとき誇張、中庸を知らぬ開放と閉鎖、挫折する革命と自由。南米をもっと知っていたならば、そのリアルさをはるかによく感じ取ることができたのかもしれない。飽きることなく猛スピードまで最後まで読むことはできる。しかし、マイブームとなりそうな気はしない。


 さて、1カ月にわたり翻訳文学中心の生活をしてきたが、ここに一旦終止符を打つ。池澤夏樹が『世界文学を読みほどく』で紹介した10大長編*1の内、フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』とジョイスの『ユリシーズ』は未読であるが、前者は近々原典に挑戦したい。後者はディプロ購入時に1冊ずつ注文し、全巻揃うのを待たずに、そのつど読むことにする(『ユリシーズ』の後は、同様の方法で『失われた時を求めて』を読破したい)。
 明日からはまた『ダロウェイ夫人』と『居酒屋』の原典講読に励む。当分、読了の報告はできそうにない。