ラテン語の文法書は数種類持っているけど、直ぐに参照できるようにしているのはサン・スルピス会師著、ジャック・ツルデル監修の『ラテン文法』(サンパウロ)と Gildersleeve & Lodge の『Latin Grammar』(私が持っているのは Nelson というところから出ている)の2種類。
前者は主としてキリスト教関係者が使うものだと思う。薄いけど、学習用の漸進的構成ではなく、体系的に記述されているのがよい。しかし、きちんと目を通していないので、全く使いこなせていない。
後者は学生時代から持っている、網羅的で体系的な文法書。当時は南江堂の『新ラテン文法』(後に東洋出版に移り、現在は絶版らしい)があれば十分だと言われていたが、私は『新ラテン文法』で学習したわけではないので、体系的でない記述から目当ての部分を探し出すのが面倒くさいのだ。
Olli (sensit enim simulata mente locutam,
quo regnum Italiae Libycas averteret oras)
sic contra est ingressa Venus : ... (4.105-7)
これを聞いたウェヌスには、本心かくしてユーノーが、
アエネーアースをイタリアの、支配の座からアフリカの、
岸へ遠ざけ振りかえを、たくらむことがよくわかる。
そこでウェヌスは切り返し、… (上p.214)
見慣れぬ形の「olli」は「illa」の古形の与格である。辞書で調べれば分かるが、確認しようと思えばやはり Gildersleeve & Lodge を使うことになる。碑文や法律で用いられたほか、詩でも後年に至るまで使用されたという説明に加えて、確認される変化形をすべて教えてくれる。
「Libycas oras」は前置詞を用いずに単独で用いられる対格で、目的地を表す用法だと思うが、これについての説明はなぜかサンパウロの文法書には出ていないようだ。結局 Gildersleeve & Lodge を使うことになる。
ということで、サンパウロの文法書はほとんど使わない。変化表用に白水社の『インデックス式ラテン文法表』を買った方がいいのかもしれない。
使わないといえば、『501 Latin Verbs』(Barron’s)と『All the Greek Verbs』(Duckworth)もそうだ。動詞の変化形から辞書で引く形を調べることができる便利な本。古典を読む際、最初に心が折れそうになるのが煩雑な動詞の活用であるだけに、持っていれば安心。しかし、ない方が記憶には定着しやすいかもしれない。
【普段参照している文法書】
- 作者:サン・スルピス会諸師
- メディア: -
Gildersleeve's Latin Grammar (Dover Language Guides)
- 作者:Gildersleeve, B. L.,Lodge, G.
- 発売日: 2009/01/19
- メディア: ペーパーバック
All the Greek Verbs (Greek Language)
- 作者:Marinone, N.
- 発売日: 1985/06/01
- メディア: ペーパーバック