本の覚書

本と語学のはなし

一神教の起源 旧約聖書の「神」はどこから来たのか/山我哲雄

一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)

一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)

 旧約聖書一神教聖典と思って読むとあれっと思うことはしばしばある。それは決して読み手の問題ではない。古代イスラエル人にとっても、神が一人しか存在しないなどということは自明のことではなかったのだ。
 長いこと、彼らは拝一神教の域を出ることはなかった。ヤハウェはあくまでイスラエルが民族として排他的に契約を結んだ神であって、他の民族の神々が存在しないことを宣言するには至らなかったのである。
 イスラエル人が一神教を発明したのはようやくバビロン捕囚期の後半に至ってからである。偶像の都バビロンにおいてイスラエルの信仰が危機に瀕したとき、一人の宗教的天才が現れた。その文書はイザヤ書に収められているが、イザヤの書ではない。旧約学者はその人を、第二イザヤと呼んでいる。


 イスラエルの民族としての成立からの信仰のあり方を詳しく考察してくれるので、歴史の過程をていねいに辿るのがとても楽しい。
 最近、こんなに線を引いた本はない。