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本の覚書

本と語学のはなし

生首愛【フランス語】

― Du moins il fut aimé comme peut-être il est doux de l’être. Quelle femme actuellement vivante n’aurait horreur de toucher à la tête de son amant décapité ? (p.306)

「ええ、ともかくあの人は、あれほど思われたらうれしいだろうと思われるくらい、愛されていましたもの。今の女で、打首になった愛人の生首におめず臆せず手を触れられる人が、一人だってありますかしら」(下p.127)

 スタンダール『赤と黒』より。我らのヒーロー、ジュリアン・ソレルに対して、ラ・モール侯爵(ジュリアンが秘書として仕えている人)の娘マチルドが言ったセリフである。
 「あの人」とはボニファス・ド・ラ・モール。女王マルグリット・ド・ナヴァールの愛人であっが*1、カトリーヌ・ド・メディシスによって斬首された。マルグリットは恋人の首を自らモンマルトルの礼拝堂に埋めに行ったという。
 そしてラ・モール嬢は、先祖の打首となった4月30日に、今なお喪服を着るのである。
 こんなところに前振りがあったんですね。すっかり忘れていた。


 語学的な注を付けておくと、最初の il はもちろん「彼」で、ボニファス・ド・ラ・モールのこと。次の il は形式主語で、意味上の主語は de l’être という不定詞句。l’ とあるのは le のことで、この代名詞は直前の aimé という受動分詞を受けている。


 あらゆる読書がキリスト教で固められていく中、フランス語だけは文学を読み続けることになると思う。あまり読みたいキリスト教関連本がなし、あったとしても入手が困難のようなので。


Rouge Et Le Noir Stendhal (Folio (Gallimard))

Rouge Et Le Noir Stendhal (Folio (Gallimard))

赤と黒〈下〉 (岩波文庫 赤 526-4 9

赤と黒〈下〉 (岩波文庫 赤 526-4 9

*1:マルグリットは後にアンリ四世となるナヴァール王の妻。しかるに、ボニファスはナヴァール王とも親友であった。

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