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旧約聖書Ⅷ エレミヤ書/旧約聖書翻訳委員会訳

旧約聖書〈8〉エレミヤ書

旧約聖書〈8〉エレミヤ書

 エレミヤの預言活動は三つの時期に区分される。さらに第一期と第三期は前期と後期に分かたれる。

 (1) ヨシヤ王時代 (前627-609年)
  (a) 前627年の召命からヨシヤの宗教改革まで
   バアル化したヤハウェ宗教の堕落の指摘
   それに対する罰としての「北からの敵」の脅威の描写
  (b) ヨシヤの宗教改革
   宗教改革に対し、初めは熱く応対するが、次第に冷めてゆく

 (2) イェホヤキム王時代 (前609-598年)
   政治的・宗教的権威と対決し、その結果多くの苦難を受ける

 (3) ゼデキヤ王時代 (前597-585年頃)
  (a) イェホヤキン、ゼデキヤの激動時代を経て、前586年のユダ王国壊滅まで
   バビロニアの脅威に関して王に諫言し、偽預言者と対決し、迫害と受難を経験
   エレミヤはバビロニアへの服従を主張していた
  (b) エルサレム陥落前後からエジプトに連れて行かれるまで
   故郷の土地を買い、やがて捕囚から解放される日の象徴行為をなす
   残留民の反乱に巻き込まれ、エジプトへと逃亡する
   その後の記録は残されていない


 しかしながら、エレミヤ書全体の構成はこれを提案することすら容易ではないようで、「編集者の明確な編集意図がそもそも存在したのかは、問い直されてよいし、たとえそれがあったとしても、その後の付加、部分的な編集組み替え等によって、現在の形ではそれが隠されている、と考えるのが妥当なように思われる」(解説p.339)というのが現状である。
 では、誰が編集したのかと言えば、いわゆる申命記史家と考えられている。バビロン捕囚期にヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記の「申命記史書」を著し、それと連動して預言書等の編集にも携わった学派である。彼らは、(1) イスラエル・ユダ両王国の滅亡と捕囚の原因を、ヤハウェの無力ではなく、民の側の契約違反・律法廃棄に帰し、(2) 捕囚の民が悔い改めて神に立ち帰るならば、救済の希望があると告知する意図を持っていた。
 それゆえ、申命記史家のドグマから解放しなければ、エレミヤ思想の核心は見えてこないだろうと訳者は言う。

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