本の覚書

本と語学のはなし

穴 HOLES/ルイス・サッカー

穴 HOLES (講談社文庫)

穴 HOLES (講談社文庫)

 物語全体の感想は以前読んだ時と変わらない。グリーン・レイク・キャンプでの最後もあっさりしすぎており、エピローグとして載せられた後日譚も、ハッピーエンドが嫌いというわけではないが、都合がよすぎる。善人が幸運で金持ちになるような話は(幸運だけではないけど)、そこで終わるべきではないんじゃないだろうか。


 今回は伏線について学ぶために読んだのだった。
 よく計算されている。それ以外には特に言葉が思い当たらない。計算されすぎていて、出来すぎた作り物にしか見えないのかもしれない。
 伏線の作り方というのは、主に四つあるように思う。一つは最初から利用法まで計算して張る伏線。一つは後から必要を感じて、前に戻って書き足す伏線。一つは何となく後で使えそうかもしれないと思いながら書いておいて、書きながら「おお、ここだ」とひらめいて回収する伏線。一つは何の目的もなく書いたことを、書きながら「おお、あれだ」とひらめいて回収する伏線。たぶん書いていて楽しいのは後の二つだろうし、その方が意外性が出て読んでる方も楽しいかもしれない。
 私は今のところ計画を立ててから書き始め、ほぼ計画に沿って書き終えるという執筆方法しかできない。たぶん読んでいる人にとっては予測のできるつまらない物語にしかなっていないだろう。『穴』の伏線は確かに立派であるが、私はそうではない伏線の消息を知りたいと思う。私が取り組む掌編の中では難しいことかもしれないけど。