老いの歌
数ふればとまらぬものをとしといひて今年はいたく老いぞしにける 古今・雑上893
角川文庫の訳。「数えるてみると、止まらずに過ぎ去ってゆくものを年といい、その名のとおり早いもので、今年はひどく年をとってしまったな」。
「とし」は「年」と「疾し」の掛詞。そういえば、「仰げば尊し」に「思へばいと疾し、この年月」とあるのも、こういう掛詞の伝統の中から生まれた歌詞なのだろう。
『古今和歌集』は恋歌だけで5巻を割いているが、老いをテーマにした巻はなく、雑歌の中にわずかに含まれる程度。それだけにあまりいい歌もないが、引用した歌は下句がとてもよくて(上句からのつなげ方もよい)、何かの折にすぐに口をついて出てきそうだ。
作者(読み人知らず)の今年に何かがあったのかもしれないが、別に何もなくてもよく、年齢を重ねるにつれ、我々は毎年いたく老いるようになるのだ。
私はすっかり集中力がなくなって、語学を学ぶのがそれはもう大変になってしまった。ますます小さな文字を読むのが辛くなって、いつまで読書できるのかすら心もとない。私も去年、いたく老いてしまった。
万葉集の歌番号
『旺文社古語辞典』の用例において『万葉集』の歌番号が他の辞書やテキストとずれているのは、『新編国歌大観』に拠っているからだった。あまり一般的ではないこの番号を採用したのはなぜだろう。おかげで、『万葉集』を読むという目的からすると、ますます旺文社の辞書は使いにくくなった。