本の覚書

本と語学のはなし

古い気息の規則

ut qui illa sonorum vetera placita teneat aut doceat, si contra disciplinam grammticam sine adspiratione primae syllabae hominem dixerit, magis displiceat hominibus, quam si contra tua praecepta hominem oderit, cum sit homo. (1.18)

それであの昔からの発音の規則を知り、あるいは教える人間が文法の規則に反して、「ひと」という語の第一音節の息を抜いて「いと」と発音しようものなら、ひどく人びとの感情を害し、同じ人間でありながら、他の人間を憎むばあいよりももっと人びとの反感を買うものである。(服部英次郎訳)

ラテン語で人のことをhomoという。昔ながらの規則ではこれをホモと発音する。ところが、4世紀末のアウグスティヌスの頃には、現代のロマンス語同様、すでにhが発音されなくなってきたらしい。ホモをオモと言うようになっていた。
▼ちなみにフランス語で人のことをhommeというが、発音はオム。イタリア語ではもうhを省いてuomoと書くようになった。こちらはウオモと読む。

▼言葉遊びがうまく訳されていないので、日本語で読んでも分かりにくい。
▼神のルールに反してヒトでありながられっきとしたヒトを憎むより、文法のルールに反してヒトという単語をイトと発音する方が、ずっとヒトビトの反感を買うものだ、ということ。
▼服部訳では「あなた〔神〕のルールに反して」が訳されていない。使った底本では本文になかったのか、単なる訳抜けか。