本の覚書

本と語学のはなし

2週間で小説を書く!/清水良典


 二週間で小説を書き上げるための本ではない。小説を書くための基礎力、心得、ノウハウを二週間で身につけようという本である。実戦練習が十四問ついているから、それを毎日こなせばよいのだが、私を含めてほとんどの読者はペンを手にすることなく、キーボードを叩くこともなく、一気呵成に読んで、これで本当に小説が書けるのか知らんと思って終わるだろう。
 わずか一枚の断片的な写真であるが、吉行淳之介の創作ノートを見ることができたのが一番の収穫だ。私がいま知りたいのは、プロットの作り方と創作ノートの取り方であったからだ。
 かっちりしたプロットそのものは、著者はそれほど重視しない。解決などより変化が重要だと言っている。そして何より大切なのは文体である。

 ものの見方と考え方、それを書く文章の語り口が独自であること。つまり文体が個性的であることだ。それが小説の魅力の第一だと私は思う。(p.153)


 だから、小説の基礎を学ぶ第一章はこう結ばれている。

 これから小説を書こうという人は、いきなり最初からはむずかしいかもしれないが、このような自分の文体を何らかのかたちで探し当てなければならない。少なくとも、よくある小説っぽい語り口をただなぞっているだけではダメだ。何とおりもの書き方を研究して、自分に合った、というより、あるキャラクターを持った何者かを演じきれるようなスタイルを、意識的に身につけた方がいい。
 ストーリーを考えたりテーマを考えたりするよりも、どういう文章で書くのか。それが一番最初で、そして最も大切な問題なのである。(p.77)


2週間で小説を書く! (幻冬舎新書)

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