本の覚書

本と語学のはなし

『間違いの喜劇』


ウィリアム・シェイクスピア『間違いの喜劇』(小田島雄志訳、白水Uブックス)
 シェイクスピアの戯曲は、学生の頃も社会人になってからも、東京と地元を結ぶ新幹線の中で読んでいたことことがある。肩ひじ張らずに楽しめて(特に初期の喜劇)、分量もちょうどよい。それならば職場に持っていくにもぴったりだろう。
 手始めに、最も短い『間違いの喜劇』を読み直してみた。言葉遊びが盛んに使われていて、翻訳では楽しめない部分もあるのだけど、それでもけっこう笑ってしまった。双子の取り違えという古典的な笑い(ローマのプラウトゥスの作品をもとにしている)だが、人間のアイデンティティに不気味な陰を投げかけもする。


 全集は全部で37冊。史劇などに未読のものが残っている。今回は全集の番号順に(『間違いの喜劇』は先に読んでしまったので、次からになるが)、最後まで読み通してみたい。

ドローミオ弟 時は破産者ですよ、空手形ばかり出して期限までに
 決済できないんですから。それに泥棒でもありますよ、
 時は昼も夜もしのび足でくるって言いますから。
 時が借金して泥棒してりゃあ、おまわりに会ったら、
 一日一時間ぐらい逆まわりしたくもなるでしょう。 (p.80)