本の覚書

本と語学のはなし

『Pride and Prejudice』


●Jane Austen『Pride and Prejudice』(Penguin Popular Classics)
 オースティンの『自負と偏見』を読了。都合のよすぎるストーリー、周りに対する意地の悪い批評。それが軽い調子で語られていく。永遠のエンターテイメントといった感じだが、私は最後には食傷気味になってしまった。
 英語の教材としては、長すぎることを除けば、けっこうお奨め。文法力とユーモアを鍛えてくれる。

Georgiana had the highest opinion in the world of Elizabeth; though at first she often listened with an astonishment bordering on alarm at her lively, sportive manner of talking to her brother. He, who had always inspired in herself a respect which almost overcame her affection, she now saw the object of open pleasantry. Her mind received knowledge which had never before fallen in her way. By Elizabeth’s instructions she began to comprehend that a woman may take liberties with her husband, which a brother will not always allow in a sister more than ten years younger than himself. (p.299)

彼女〔ジョージアナ〕は、義姉〔エリザベス〕をとても高く買っていた。もっとも、はじめは、エリザベスがひどく元気で、ダーシー〔ジョージアナの兄でエリザベスの夫〕に物一つ言うにしても、まるでふざけているかのような話しぶりなのには、ほとんど恐れに近いおどろきをもって、聞いていたことも、よくあった。なにぶん彼女自身などには、愛情というよりは、むしろ畏敬の念をもって眺められたその兄が、まるで公然とからかいの種になっている! いわば彼女の心は、まるでいままでとても思いもかけなかった、教育を受けたわけだった。そして彼女も、エリザベスの教育で、やっと分かりかけたことは、十以上も年のちがう兄の場合、妹としては、かならずしもゆるしてもらえない無遠慮も、妻にはけっこうゆるされることもあるのだ、ということだった。(p.592)


 翻訳は中野好夫のものを参照したが、誰が訳しても大して変わらないだろう。オースティンの書いたとおり日本語に直せば、大抵意味は通じる。ただ、会話の調子は全体の雰囲気を決定する。翻訳を単独で読むならば、何種類も出ていることだし(中野訳以外は『高慢と偏見』というタイトルだが)、書店で慎重に読み比べてから気に入ったものを購入した方がよい。私には、中野訳の会話は胃にもたれてしまう。

 「そりゃそうよ、わかってるわ。だからそこ不思議なのよ。お姉様みたいに頭がよくて、それでいてどうして他人の欠点だとか、バカさかげんといったものが、そんなにからっきしわからないんだろうなあ! 見せかけだけの純真さなんてのなら、めずらしくもなんともない。いくらでもそこいらにいるわよ。だけど、見栄でもない、わざとでもない純真さ――つまり、他人のいいところだけ見るばかりか、しかも実際以上に見てやってさ、悪いとこのほうはいっさい口にしないなんて――こればっかりはお姉様のお家芸だわ。だから、お姉様は、あの姉妹だとかいったあの人たちも、きっと好きなのねえ。あの人たちの様子というのは、兄さんよりはちょっと下ねえ」(p.23)

Pride and Prejudice

Pride and Prejudice

  • 作者:Austen, Jane
  • 発売日: 2007/01/25
  • メディア: ペーパーバック
自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)