本の覚書

本と語学のはなし

『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』


勝間和代お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』(光文社新書
 実践書というより、やさしい啓蒙書である。タイトルから想像していたのとは違い、なかなかいい本だった。
 お金を銀行に預けておけば元本割れはしないかもしれないが、リスク資産を持つ場合より相対的には目減りをするのであるから、損をする。だから、金融リテラシーを身に付けて、投資をするべきだ。
 しかし、デイトレードのすすめではないし、FXで資産を何十倍にもしようというのでもない。リスクは計量可能なものであり、リスクを取るとは冒険をすることではない。リターンは年5パーセントで上出来である。
 儲けるための基本5原則は以下のとおり。


1.分散投資分散投資分散投資
2.年間リターンの目安として、10%はものすごく高い、5%で上出来
3.タダ飯はない
4.投資にはコストと時間が必要
5.管理できるのはリスクのみ、リターンは管理できない


 それが分かったら、実際に投資をしながら金融リテラシーを磨く。そのための10のステップ。


1.リスク資産への投資の意思を固める
2.リスク資産に投資をする予算とゴールを決める
3.証券会社に口座を開く
4.インデックス型の投資信託の積み立て投資を始める
5.数ヶ月から半年、「ながら勉強」で基礎を固める
6.ボーナスが入ったら、アクティブ型の投資信託にチャレンジ
7.リスクマネジメントを学ぶ
8.リターンが安定したら、投資信託以外の商品にチャレンジ
9.応用的な勉強に少しずつチャレンジ
10.金融資産構成のリバランスの習慣をつける


 いきなり素人が個人で株やFXに手を出すのはギャンブルでしかない。先ずは投資信託がよい。その中でも、手数料の安いノーロードやインデックス投資がお勧め。インデックス投資をする場合も、日本株式、日本債権、海外株式、海外債券に分散するべきである…。


 こんな感じの話が続く。
 あれっ、と思う人もいるだろうけど、著者にとって金融リテラシーとは、チャートからランダムウォークの行く末を予言するようなことではなくて、そんなものは誰にも分からないことを前提としつつ、どのように資産配分すれば確率的に儲かるのかを身に付ける能力なのだ。
 それだけにとどまらない。金融には社会を変える力があると言う。社会責任投資(SRI)という考え方がある。ネガティブもしくはポジティブな基準によってスクリーニングし、投資先を排除もしくは考慮するというものだ。日本にはまだエコ・ファンドやファミリーフレンド・ファンドといった限定的な投資信託しかないようだが、今後広まりを見せるだろう。


 金融英語を翻訳しようというのだから、リスク資産も持ってみようと思う。
 リターンで生活してしまおうとまでは考えていないので、著者の勧めるようなインデックス投資の分散に、もう一つエコ・ファンドあたりを組み合わせる程度だろう。
 ワークライフバランスの適正化とSRIによる資本主義の修正というのは結構な話だ。もう一つ先を見据えることはできないだろうか。