本の覚書

本と語学のはなし

Iliad, 11-12


 〔原文〕
 οὔνεκα τὸν Χρύσην ἠτίμασεν ἀρητῆρα
 Ἀτρεΐδης.


 〔松平訳〕
 アトレウスの子が祭司クリュセスを辱めたことを…


 〔ロエーブ英訳〕
 for that upon the man Chryses, his priest, had the son of Atreus wrought dishonour.


 「ἀρητῆρα」につけたClyde Pharr『Homeric Greek』の注を書き抜いておく。*1


 Observe that this verse ends in two spondees, making it a “spondaic” verse. This, together with the position of the final word, throws special emphasis upon it, making it practically equivalent to “although he was a priest,” which would of course make him an object of more than ordinary reverence.


 かいつまんで言えば、11行目は長々格(spondee)が2つ重なって終わる特別な行となっており、加えて「ἀρητῆρα(祭司)」は行末に置かれたことで更に強調される。だから、これを単に「クリュセス」の同格として捉えるのではなく、「祭司であるにもかかわらず」という節に等しいものと考えなくてはいけない。
 松平訳はとても平板だ。英訳の方は、語順をうまく操作している。

*1:この本はやさしい英語でホメロスを読めるように導いてくれるので、とても重宝する。

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