本の覚書

本と語学のはなし

『実存から実存者へ』


レヴィナス『実存から実存者へ』(西谷修訳,ちくま学芸文庫
 この本の中で私にもはっきり理解できるのは訳者あとがきだけ(内的に分節された「瞬間」の中で「実存者」の誕生という出来事が起こっている。しかし、それは「本来的実存」の誕生などではなく、主語が動詞を支配するように、主体が存在を支配して立つことであり、この主体は自らの実存を重荷として引き受ける従属者でもある。これが「イポスターズ(実詞化・実体化)」だ、云々)。


 やっぱりレヴィナスは面白いじゃないか、と思う。
 とは言え、あくまで解説を読んでそう思うのであって、レヴィナス自身の文章にインスパイヤーされるなんてなかなか可能なことではない。
 とりあえず、一度レヴィナスの原典講読からは離れてみる。入門書は読み続ける。また直接読みたくなったら、再チャレンジだ。


 哲学の原典は、レントのテンポに耐えうる相性の良さがないと、なかなか読了にまで至らないし、仮に読了しても概念の理解が追いつかなかったり、それどころか哲学する営み(これが一番肝心なところ)が全く見えてこなかったりする。
 私の場合、哲学者としては先ずカントにじっくり取り組むべきかも知れない。それから、実はフランス系が苦手なのかもしれない。功利主義とか読むべきなのかもしれない。