本の覚書

本と語学のはなし

【モンテーニュ】人間が他の被造物に対して有するとかいう【エセー2.11】

Mais, quand je rencontre, parmy les opinions les plus moderées, les discours qui essayent à montrer la prochaine ressemblance de nous aux animaux, et combien ils ont de part à nos plus grands privileges, et avec combien de vraysemblance on nous les apparie, certes, j'en rabats beaucoup de nostre presomption, et me demets volontiers de cette royauté imaginaire qu'on nous donne sur les autres creatures. (p.435)

しかしながら、それよりもずっと穏健な意見のなかでさえ、人間と動物とが近親であって、類似していることを示し、彼ら動物が、われわれの最大の特権をどれほど共有しているのか、両者を対比することが、いかに真実にかなっているのかを証明しようとする議論に出会うと、まったく、わたしとしては、そうした人間の思い上がりなどは、大幅に暴落させてやって、人間が他の被造物に対して有するとかいう、想像上の王位などは、投げ出したくなる。(p.215-6)

 モンテーニュ『エセー』第2巻第11章「残酷さについて」を読了する。
 人間の徳を論じた後に、不徳の最たるものとして残酷さが取り上げられる。最後は動物の話になるが、もちろん人間が人間に対して振るう残酷さも、宗教戦争の時代にはありふれたことであった。ただ楽しみのためだけに、人を傷つけ殺すということがありうることを、自らの本性を内省するだけでは信じることもできなかったけれど、実例を通して嫌でも納得させられるのである。


 次はいよいよ長大な「レーモン・スボン弁護」である。翻訳はこの1章だけに1冊が割り当てられる(宮下と関根の訳では第4巻、原の訳では第3巻)。
 長いだけではなくて、話もだいぶ哲学寄りになる。宮下は全訳をする上での難所と言うが、読む方にとっても最大の難所であろう。今のペースでは半年以上かかるに違いない。