本の覚書

本と語学のはなし

モンテーニュ全集4 モンテーニュ随想録4/モンテーニュ

 第2巻第12章「レーモン・スボン弁護」のみを収める。関根秀雄の全集では、『随想録』は7冊に分けて訳出されている。つまり、全体の7分の1ほどがこの1章にあてられているのである。
 レーモン・スボンという人のことはあまり詳しく分かっていないようだが、『自然神学』というラテン語の著作を残しており、モンテーニュはこれをフランス語に翻訳した。

わたしはこの著者の思想を立派だと思った。その本の構成はちゃんと筋道が立っているし、その意図には敬虔な心情が満ちみちている。それに多くの人々が熱心にこれを読んでおられることだし、わけても貴婦人がたが御熱心であるから(我々は貴婦人がたには特に奉仕せねばならないから)、わたしはしばしばそれらのかたがたの味方になって、その愛読の書物から世間がこれにあびせる二つの主な抗議を取り除いてさしあげずにはいられなかった。(p.10-11)

 この愛読者の中には、ナヴァール王妃マルグリット・ド・ヴァロアがいた。カトリーヌ・ド・メディシスの娘であり、後にフランス王アンリ4世となるナヴァール王アンリの最初の妻である。「レーモン・スボン弁護」は彼女に献呈されたと推定されている。


 全体は大きく二つに分けられるようだ。
 第一部は「自然界またはすべての被造物の間における人間の地位」と言うべきもので、関根はこれを畢竟「万物斉同」の思想であるとまとめる(関根はモンテーニュの内に老荘の思想を読み込むのが好みである)。
 第二部は「理性の批判」と呼ぶべきもの。決して理性や判断力を捨て去るわけではないが、いかにそれが頼りないものであるか、これでもかとばかりにあげつらう。
 どうやらこれらはレーモン・スボンの弁護にはなっていないようで、モンテーニュ自身の宗教観を披瀝しているものらしい。