本の覚書

本と語学のはなし

ノーサンガー・アビー/ジェイン・オースティン

 主人公は当時の小説のヒロインとは似ても似つかない。ロマンチックな生い立ちなどとは無縁で、言ってみれば普通の女性である。
 ゴシック小説愛好家のヒロインは、ドン・キホーテのように、小説世界と現実の区別が付かなくなることもある。しかし、彼女が想像するようなホラーじみたことは何も起こらない。
 作者が追求するのはリアルな世界なのである。作者の主張が、少し煩わしいほど随所に出てくる。パロディーとしての意図が強調されているようである。