本の覚書

本と語学のはなし

懐妊

 七月になりてぞ参りたまひける。めづらしうあはれにて、いとどしき御思ひのほど限りなし。すこしふくらかになりたまひて、うちなやみ面痩せたまへる、はた、げに似るものなくめでたし。例の、明け暮れこなたにのみおはしまして、御遊びもやうやうおかしき空なれば、源氏の君もいとまなく召しまつはしつつ、御琴笛などさまざまに仕うまつらせたまふ。いみじうつつみたまへど、忍びがたき気色の漏り出づるをりをり、宮もさすがなることどもを多く思しつづけけり。(若紫14)

 七月になってから、宮〔藤壺の宮〕は参内なさるのであった。しばらくぶりでお気持ちもあらたに、またしみじみといとおしくて、〔桐壺帝の〕いよいよまさるご寵愛の深さはどこまでも限りがない。少しふっくらとおなりになって、愁わしく面やつれしていらっしゃるご様子も、やはり、いかにも無類のお美しさである。例によって帝は明けても暮れても宮のお部屋にばかりお越しになって、管弦のお遊びもしだいに興の増す季節であるから、源氏の君をもしょっちゅうおそばにお召し寄せになっては、お琴や笛など、あれこれとご下命あそばす。君はつとめて隠していらっしゃるけれども、こらえきれないご様子の表にあらわれてしまう折々は、宮もさすがにお忘れになれぬあれこれのことを思い続けていらっしゃるのだった。


 父帝が寵愛する藤壺を妊娠させてしまった源氏。その不義の子は、やがて冷泉帝として天皇の地位に就くであろう。いまさらながら凄い話だ。


 昔やったことのある業務の求人を見つけた。直ちに応募するとは限らないが、既にイメージトレーニングはしている。