本の覚書

本と語学のはなし

『黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇』


●ポオ『黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇』(八木敏雄訳、岩波文庫
 「黄金虫」は中学の時に新潮文庫で読んだ記憶がある。数字と記号の羅列からなる暗号を英文に置き換えていく謎解きに力点があるので、当時は分かったような分からないようなもやもやした気分で読み終えた。今回も英文にきちんと目を通したわけではないが、理解できようができまいが、明晰な推理の過程を追うことは可能である。いつの間にか適当に力を抜いて読むことを覚えたのだった。
 「アモンティラードの酒樽」の一部は、翻訳の通信講座基礎編で課題に出され、英文で読んだ。日本語で読んでもどいう状況なのか把握しにくいところがある。一部を見せられて訳せと言われても、とても正確な翻訳なんて無理だ、と今になって思う。
 「リジーア」は傑作の誉れ高いと言うが、元来ゴシック小説は苦手なので全然集中できない。しかし、ポオの本質がゴシック作家である以上、多かれ少なかれ、全篇を通して上の空になりがちではあった。


 次もポオの短篇集。その後はフィッツジェラルドの短篇集。翻訳を読むのはとりあえずそこまでにしておいて(英米仏の短篇集を片付けておきたかったので)、やっぱり英語とフランス語の原典講読に力を入れることにする。それだけじゃちょっと足りないという時には、今回のように古典を犠牲にするのではなく、英米文学の原典を中断して急いで読む。

黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇 (岩波文庫)

黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇 (岩波文庫)

  • 作者:ポオ
  • 発売日: 2006/04/14
  • メディア: 文庫