あてなるもの 薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷に甘葛入れて、あたらしき鋺に入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅花に雪の降りかかりたる。いみじううつくしきちごのいちごなど食ひたる。(40 あてなるもの)
高貴なもの 薄紫色の上に白襲の汗衫を着ているの。鴨の卵。削り氷に甘葛を入れて、新しい金属製の碗に入れてあるの。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪が降りかかっているの。とてもかわいらしい幼児がいちごなどを食べているの。
「甘葛(あまづら)」は甘葛の葉や茎を煎じて作る甘味料のこと。これを削った氷にかけるというのだから、平安時代には既にかき氷が存在したらしい。
「うつくし」は「かわいらしい」。いちごは現在一般的に食べられているものではなくて、野生の木いちごをいうものらしいけど、いちごという語感が古典の中ではとても新鮮に感じられる。