本の覚書

本と語学のはなし

Bel-Ami


 『ベラミ』は快調だ。最近の方針により英文学と交互に読んでいるし、時々和書のために中断もするので、終わりそうでなかなか終わらないが、読むときにはかつてないスピードでかつてない量をこなす。やっとフランス語を使って何かできそうな気がしてきた。


 今日は語学的なメモ。

« Voyons, qu’est-ce que vous avez ? »
Il prononça, comme si on lui eût arraché un secret du fond du coeur.
« J’ai... j’ai... j’ai que je suis jaloux de lui. » (p.357)

―― 変ね、いったい、どうなすったの?
彼は、まるで心の底から秘密を抜き取られたように、こう言った。
―― つまり…… 僕は…… あの男を妬いているのです。(下228頁)


 〈j’ai que...〉というのは英語にそのまま置き換えると〈I have that...〉となる。あまり見かけない形だ。理由を示す構文ではないかと想像し、翻訳によってその仮定も裏付けられたようには思ったが、一応、朝倉の『新フランス文法事典』(白水社)で調べてみた。

avoir que avoir を用いた問いを受けて: Qu’est-ce qu’il a donc ? ― Il a qu’il est bizarre. (Green, Moïra, 99) 「一体どうしたんだろう? ― 変なのだよ」 ⇒ avoir que は問いと答えを結ぶ.(93頁)


 つまり、これは問いの形式に規定された構文であって、明確な意味を担っているわけではないらしい。〈Tu es pâle.〉(顔色が悪いわよ)と言われた時などには、使えないのである。調べた甲斐はあった。