本の覚書

本と語学のはなし

The Old Man and the Sea


 『老人と海』の福田訳。良し悪しは別として、こんな感じ。

No one would steal from the old man but it was better to take the sail and the heavy lines home as the dew was bad for them and, though he was quite sure no local people would steal from him, the old man thought that a gaff and a harpoon were needless temptation to leave in a boat.

だれもこの老人のものを盗むものはいない。が、帆や重い綱は夜露にあてるといけないので、家へ持ちかえっておくに越したことはない。老人も、このへんの連中がまさか自分に盗みをはたらくわけはないと信じていたものの、魚鉤(やす)や銛(もり)を船に残しておいて人々の出来心を誘うのも心ないわざだと考えていた。(12-3頁)


 『翻訳家の仕事』(岩波新書)の巻末に、大勢の執筆者の紹介コーナーがある。その中で、金原瑞人は「記憶に残る翻訳作品は何か」というアンケートに答えて言う。

老人と海』。釣りが好きだったこともあり、中学生の頃に読んで、感動。その後、原書で読んで、また、感動。あの突きささるような文体がすごかった。その後、文庫本の翻訳を読み直して落胆。ちょっと、ひどい。


 これは誰の翻訳のことだろうか。