本の覚書

本と語学のはなし

散髪

 歩いて散髪屋に向かう途中、不意に開放感に包まれた。数年前、日常を全て忘れ去って初めてパリに降り立ったときのように。


 「もったいない」と人は言うだろう。しかし、9年間もよく続いたと私は思う。
 逃げるように去っていくのは私の病気であると人は言うだろう。しかし、死を生きるよりはむしろ病気を生きるべきではないだろうか。塩味を失った塩があり得ないならば、病気でない私もまたあり得ないのではないのではないだろうか。