本の覚書

本と語学のはなし

『金融大狂乱』


●ローレンス・マクドナルド、パトリック・ロビンソン『金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか』(峯村利哉訳、徳間書店
 リーマン・ブラザーズのトレーダーだった著者マクドナルドが、金融危機当時内部で起きていたことを克明に描く。
 2005年の5月頃、著者らの一派は既にサブプライムの行く末に懸念を抱いていた。優秀な社員はたくさんいた。しかし、ワンマンな会長による放漫な経営がまかり通っていた。なんとも不思議な話である。
 面白い本なのだけど、必要以上に善悪の構図を強調し過ぎているような気がする。会長一味に比べれば、たしかに著者らのグループは優秀で良心的かもしれないが、一般の感覚からすればやはり同じ穴の貉のようなものではないか。「彼らの財産をかすめ取ってるのよ」と同僚に励まされつつ底値の債券を買いあさる場面などは、違和感を覚えずに読むことはできない。


 もう一人の著者ロビンソンはプロの作家で、文章の彫琢を担当している。