●藤巻健史『マネーはこう掴む 個人で使えるデリバティブ』(光文社,2008年)
デリバティブの使い方指南。『実践・金融マーケット集中講義』(光文社新書)の簡略版といった感じだ。『金融マーケット』を読んだ時は未だ金融が何なのか全く分からない頃だったから、途中で付いていけないところもあった。『マネーはこう掴む』はとてもやさしいので、当時の私でも理解できただろうと思う。
デリバティブといっても複雑な金融工学の話ではない。藤巻自身、JPモルガンで伝説のトレーダーと呼ばれた頃でさえ、基本的なデリバティブしか使わなかったと言う。ここで扱っているのも、外国為替証拠金取引、債券先物取引、日経225先物、日経225オプション取引などに限られている。
デリバティブ入門としてなら問題はないが、出版の時期が悪かった。前著『マネーはこう動く』(光文社)に引き続き、サブプライム問題を完全に見誤っている。2008年1月現在で既に峠は越したとみており、講演会ではアメリカの金融株を買うことを勧めたりもしたようだ。随分恨まれているのではないだろうか。
個人としては(自分の会社を含めて)、長期固定でお金を借り、そのお金で不動産を買い(ゆるやかな資産インフレが望ましいので)、レバレッジを効かせて日経225の先物を買い(日本の個別株は買わない)、アメリカ株の個別銘柄を買い、外国為替証拠金取引でドルを買い(円安に向かうはずなので)、時には日経225先物のオプションを買い、債券先物を売り(金利が上がると予想するので)、債券先物のプット・オプション(売る権利)を買っている。そして、かなり損はしてきたけど、「今」はチャンスであると考えている。しかしながら、今後どう転じるかは分からないが、少なくとも今現在損失はますます膨らんでいるはずであり(手当はしていると思うけど)、藤巻が思い描いていたV字回復は実現しそうにもない。
サブプライム以前に予測した景気や株価の動向が今のところ反対方向に向かっているということで藤巻を低く評価しようとは思わない。しかし、サブプライムに関しての藤巻の分析はかなりの程度的を外しているようだ。トレーダーの仕事ではないかもしれないけど、いずれ今回の金融危機を総括した本を出して欲しいところだ。
- 作者:藤巻 健史
- 発売日: 2008/02/21
- メディア: ハードカバー