本の覚書

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聖書外典偽典1 旧約外典Ⅰ/日本聖書学研究所

 収録されているのは、第一エズラ書、第一マカベア書、第二マカベア書、トビト書、ユディト書。新共同訳の旧約続編に収められているエズラ記(ギリシア語)、マカバイ記一、マカバイ記二、トビト記、ユディト記と同じものである。

 第一エズラ書は、捕囚から帰還した後の神殿再建をめぐる物語。旧約正典のエズラ書やネヘミヤ書とそう変わらない。
 マカベア書はその後、祖国の独立を守ろうと奮戦したイスラエルの物語。第一と第二は上下の関係にはなく、それぞれ同じ時代のことを別の観点から描いたものである。第一はハスモン家の宮廷歴史家と見られるのに対し、第二はハスモン家を徹底的に無視ないしは敵視する。
 なお、第三マカベア書は別巻(補遺Ⅰ)に、第四マカベア書は第三巻(旧約偽典Ⅰ)に収録されている。これらは新共同訳の旧約続編にも収められていはいない。
 トビト書は捕囚期のおとぎ話。信仰篤い人間の善行が、いったんはそのために却って不幸をもたらすようではあっても、最後には報われるというような内容。
 ユディト書はおそらく意図的に時代錯誤の設定を選択しているのだけど、信仰と勇気をもった女性が貞節を守りながら敵将の寝首をかき、祖国の危機を救う物語。


 この内、第一エズラ書を除く四書は、カトリックでは第二正典として扱われており、教義の根拠としても用いられることがある。

 たとえば、第二マカベア書12章45節。

さらに彼は信仰をもって眠りについている人々のためにたくわえられているすばらしい恵みに思いをいたした。それは聖く義しい思想であった。そういうわけで戦死者のために宥めの供え物を献げ、罪を赦されるように祈った。

 ここから死者へのとりなしの祈りが正当化される。

 たとえば、第二マカベア書15章12-16節。

その幻は次のごとくである。すぐれたりっぱな人物であり、その立居振舞は控え目にして性質は穏やか、ことばつきは優雅であって、子供のころからあらゆる徳に属する事柄を学び尽くしていた先の大祭司オニアスが手をさし伸べて、ユダヤ人の全軍のために祈っていた。するとそこへ白髪とその輝きのゆえにひときわ目立つ人物が現れた。その人は何か驚くべき偉大な卓越性を身に帯びていた。オニアスが口を開いて語った。「このおかたは同胞を愛し、民と聖なる町のために熱心に祈っていてくださる神の預言者エレミアです」。するとエレミアは右手を伸ばしてユダに黄金の剣を手渡し、そしてこう言った。「神からの賜物であるこの剣をとり、これをもって敵をうちくだけ」。

 これは聖人によるとりなしの思想へと連なってゆく。

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 エズラ書の数え方は複雑すぎるので、文章にしてもよく分からないだろうけど、以前書いたことがあるので貼っておく。