本の覚書

本と語学のはなし

ドイツ時間


 カフカ『変身』より。


Ehe es einviertel acht schlägt, muss ich unbedingt das Bett vollständig verlassen haben. Im Übrigen wird auch bis dahin jemand aus dem Geschäft kommen, um nach mir zu fragen, denn das Geschäft wird vor sieben Uhr geöffnet.


七時十五分になる前に、何としてもベッドから出ていること。おそらくそれまでに会社から、誰かがようすを見にやってくる。会社は七時前に開いているからな。


 今日は池内紀の翻訳についてではない。
 ドイツ文学の学士号を持っているなんて、恥ずかしくて公言できないようなメモをしておく。実践的な訓練を全くしていないので、ドイツ語の奇怪な時計の読み方をすっかり忘れていたのだ。


 「einviertel acht」は何時何分か? そのまま英語にすると「a quarter eight」。私は「einviertel」と「acht」の間に「vor(of, to)」か「nach(after, past)」が省略されているものと勝手に想像して、「7時45分」だろうか「8時15分」だろうかと迷った。
 ところがこれは「7時15分」なのである。
 そういえば、「7時半」は「7 Uhr 30」の他に、「halb(half) 8」とも言う。8時に向かって1/2ということだ。「einviertel acht」も同様で、8時に向かって1/4だから「7時15分」。これが「7時45分」ならば、8時に向かって3/4だから「drei viertel acht」。
 ふぅ、ようやく学生時代に習った記憶が戻ってきた。


 おさらいをしておくと、「7時15分」を表現するには、3つの言い方がある。
 ①「7 Uhr 15」(7時15分そのもの)、②「[ein] Viertel nach 7」(7時1/4過ぎ)*1、そして③「viertel 8」(8時に向かって1/4)。


 ここまで分かれば簡単に答えが出るはずの問題。
 問い:「5 vor halb 8」は何時何分か?
 答え:8時に向かって1/2の5分前だから「7時25分」。


 こんな時計の読み方、今のドイツ人も普通にしているのだろうか?


 ここに書いたようなことは大概の文法書にも出ていると思うが、『必携ドイツ文法総まとめ 改訂版』(白水社)ならば140ページと141ページを見ると、表と図で詳細に解説してくれている。

*1:ここまでなら私も覚えていたのだが…。