本の覚書

本と語学のはなし

『翻訳と日本の近代』


丸山真男加藤周一『翻訳と日本の近代』(岩波新書
 あとがきによれば、日本近代思想体系15『翻訳の思想』(岩波書店)の編集のために、加藤が丸山に質問を発し、丸山が応えた内容を整理したのが、この本である。
 初めから出版を意図した対談というものではないので、はっきりした構成があるわけでもなく、終わり方も唐突だ。これで本になるのは、丸山と加藤だからこそだろう。
 荻生徂徠福沢諭吉という丸山の大好きな人たちのことや、明治期に何故・何を・如何に訳したのかということが主として話題になる。
 翻訳論としてよりも、彼らの歴史感覚を楽しんだ。歴史となると、私の知識は高校の参考書レベルに留まっている。テレビのクイズ番組で出題される歴史問題などはたいがいそれで答えられるので(中学レベルの知識でもかなり答えられそうだが)、歴史を知っているような錯覚に陥ることもあるけれど、こういう本を読むと「ごめんなさい」と謝りたくなってしまう。
 幕末から明治にかけては、一度きちんと勉強したい。

翻訳と日本の近代 (岩波新書)

翻訳と日本の近代 (岩波新書)