本の覚書

本と語学のはなし

Newton 2023年2月号【バイアスの心理学】

 少し前、毎号心理学の記事が載せられていた。今回の第一特集「バイアスの心理学」は、それらをまとめて、ちょっと増補したような内容。
 自分では冷静に判断したつもりでも、案外人間の心には勝手な思い込みが潜んでいるものである。その思い込みには、多くの人に共通した傾向が見られることもある。我々の生存のためにプログラムされたバイアスであるのかも知れない。
 正常性バイアスというものがある。災害が起きたときに逃げ遅れるのは、逃げることができなかった場合もあるが、逃げなかっただけの場合も多い。「このくらいなら大丈夫」「まだそれほど危険じゃない」と人は思い込みがちなのだ。
 非日常的な状況では、大きなストレスを回避するために楽観性バイアスがはたらくことがある。その延長線上に正常性バイアスもあるとすれば、これは我々の心を守るための重要な機能ではある。
 だが、一定の限度を超えれば、楽観性だけで乗り切れるものではない。気がついたときには手遅れになることもある。心に余裕を持ちながら、適度に小心であることは、命を長らえる秘訣であるようだ。