本の覚書

本と語学のはなし

シェイクスピア全集3 喜劇Ⅲ/シェイクスピア

 『尺には尺を』(平井正穂)、『ペリクリーズ』(御輿員三)、『シンベリン』(三神勲)、『冬の夜語り』(福原麟太郎・岡本靖正)、『あらし』(和田勇一)を収録。喜劇というよりは、いわゆる問題劇やロマンス劇である。
 『尺には尺を』は『終わりよければすべてよし』と同様、ベッド・トリックが出てくる物語。終わり方もまた不気味である。
 『シペリクリーズ』や『シンベリン』『冬の夜語り』は、長い年月の末に、生き別れになっていた親子、夫婦が再会する、回復の物語である。カトリック的な融和が主題となっているのだと、誰かが言っているのをどこかで読んだことがある。
 『あらし』は単独で書いたものとしては、シェイクスピア最後の作品。孤島に逃れたナポリ公国の元君主が、魔術を使い、妖精を使い、嵐を起こして自分を追放した者たちを島へと誘い込む。だが、それは復讐のためというよりは赦すためである。解説で小津次郎は予定調和的なこの作品を「壮麗な一篇の劇詩」と表現する。劇作家としては、既に『冬の夜語り』をもって終わっていたのだという。