本の覚書

本と語学のはなし

ヴィジュアル版 星座図鑑/藤井旭

 月ごとに、東、南、天頂、西、北に見える代表的な星座を紹介する。
 全天88の星座を網羅するわけでもないし、日本から見えるものを全て扱うわけでもないし、重複もある。
 しかし、ヴィジュアルの名の通り、どの項にもわかりやすい星座図が掲載されている。読む星座早見盤として、入門者が用いるのにちょうどよさそうである。


 もう少し説明が詳しいといいのにと思うことはある。
 たとえば、12月東の空の項ではふたご座流星群が紹介されるけれど、毎年12月13日~14日頃をピークに、カストルのあたりから流星群が出現する、ということしか書かれていない。
 第一に、ふたご座は方角を示すにすぎない。現代においては、星座は天文学への導入の一つにすぎないかも知れないが、実用的な役割があるとすれば、地球から見た宇宙の方角の呼称として使うのに便利である。
 したがって、ふたご座流星群は決してふたご座の星々が流星となるのではない。仮に遙か彼方の星が動いていたとしても、流星のようには見えない。アルクトゥルスは秒速125キロで見かけ上スピカの方へ移動していると言うが、スピカと並んで本当の夫婦星となるのは6万年後のことである。またもし、ふたご座の星々が地球に落ちてくるのだとしたら、既に地球は滅亡している。
 第二に、流星群というのは星々ではない。その正体は、彗星がその軌道上に落としていった塵である。毎年同じ時期に地球がそこを通るので、毎年同じ方角から塵が大気に突入し、流星として観察されるのである。大きな隕石ではないから、地表に届くことはない。その前に燃え尽きてしまう。
 ふたご座流星群の場合、ファエトンという小惑星がその母天体である。現在は尾を引いていないが、かつては彗星であったと考えられているという。