パンタグリュエル―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈2〉 (ちくま文庫)
- 作者:フランソワ ラブレー
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 文庫
嬉しいことに、この巻には『ガルガンチュア大年代記』の訳も収められている。この書の出版にラブレーが関与したとする説もあるようだが、彼自身の著作とは認められていない。飽くまでも産婆役としての特権的地位を考慮して、収録したものらしい。
首を切られて死んだエピステモンが蘇生した後、冥界の様子を語る場面がある。この世で栄華を誇った者が成り下がり、不遇を託った者が成り上がっているのだという。前者のグループには皇帝や大王に加え、数々の教皇も含まれる。
ジャン・ルメール先生にも会いましたが、教皇のふりをしておられ、現世では国王や教皇だった方々に、あわれにも、足に接吻をさせておりました。そして、ものすごく偉そうな顔で、彼らに祝福を授け、こう述べておりました。
〈ほらほら悪党どもよ、贖宥を受けとるがいい。ほら、そんなもの安く売っとるのじゃからな。パンとスープの罰を赦してしんぜよう。もう金輪際、役立たずではなくてもいいのだぞ。〉(p.348-9)
ジャン・ルメールは中世末の「大押韻派」の大作家、ユマニスト、年代記作者で、教皇ユリウス二世を批判する論陣を張っていたそうである。
この後、先生は二人の元道化の枢機卿にに命じて、免罪勅書を発行してあげる。ただし、「腰のあたりに、杭を一発ずつぶちこんでからですよ」との条件を付けてのことである。