本の覚書

本と語学のはなし

道の道とす可きは、常道に非ず【漢文】

新釈漢文大系〈7〉老子・荘子 上巻

新釈漢文大系〈7〉老子・荘子 上巻

 初めに書いておくが、続くかどうかは分からない。よほど魅力を感じなければ、途中で投げ出すかもしれない。
 漢文を読むのは根気が要るし、長い研究の歴史には目がくるくる回る。こんなことを言ったら怒られるかもしれないが、言語の欠陥ではないかと思うほどに、解釈の余地が広すぎることに、何よりも恐れを抱く。


 新釈漢文大系の『老子荘子』(上下)と『論語』を購入した。古書だと比較的安く手に入る。前者はあまりに安かったので心配していたが、ほとんど読んだ形跡はなかった。後者は著者の自筆で謹呈の文字が書いてあった。贈られた人が亡くなり、遺族が処分したものであろうか。状態は悪くない。
 これを軸にしながら、必要に応じてたくさん出ている訳注本を少しずつ揃えて参照したい。今持っているのは、『論語』と『荘子』は岩波文庫の金谷訳注、『老子』は中公文庫の小川訳注のみである。


 『老子』から始める。第1章を読んでみた。

道可道非常道。名可名非常名。無名、天地之始。有名、萬物之母。故常無欲以觀其妙、常有欲以觀其徼此兩者同出而異名。同謂之玄。玄之又玄、衆妙之門。

 新釈漢文大系の本文には、句読点のみならず、返り点が付いている。読み下しや通釈と照合する便宜をはかってか、区切りを示す記号も挿入されている。純粋な白文ではない。
 著者の解釈が本文にも入り込んでいるわけである。しかし、一般の読者は著者の読み下しに従うしかないのだし、他の可能性を考える際にも邪魔になるどころか足がかりを与えてくれる気がするので、私は大いにこれを歓迎している。
 読み下し文。

道の道とす可きは、常道に非ず。名の名とす可きは、常名にあらず。名無し、天地の始めには。名有れ、萬物の母にこそ。故に常無は以て其の妙を觀んと欲し、常有は以て其の徼(けふ)を觀んと欲す。此の兩者同じきより出でて名を異にす。同じきもの之を玄と謂ふ。玄の又玄、衆妙の門。(p.11)


老子 (中公文庫)

老子 (中公文庫)

  • 発売日: 1997/03/01
  • メディア: 文庫
 小川環樹の読み下し。

道の道(い)う可きは、常の道に非ず。名の名づく可きは、常の名に非ず。名無きは、天地の始めにして、名有るは、万物の母なり。故(まこと)に「常に欲無きもの、その妙を観、常に欲有るもの、その徼(きょう)を観る」。此の両(ふた)つの者は、同じきより出でたるも而(しか)も名を異にす。同じきものは之を玄と謂う。玄の又玄、衆妙の門なり。(p.5)


 一番の違いは、「故常無欲以觀其妙、常有欲以觀其徼」を後の挿入と捉えるか否かということである。
 新釈の立場は余説に書かれている。

この二句があるために、非常に通釈が困難であり、後人の語として除去してしまえば苦労はないが、一応、現在伝わっている本文を通釈するのが筆者の役目であるし、また老子道徳経を今のような形に編纂した人々は、何とかこれを筋を通して理解していたのであろうから、私も、あるがままにして出来るだけ合理的に通釈しようと試みた次第である。私も、この二句は後人が書き入れたもので、恐らく書き入れた人の気持ちでは、「無欲であれば道の妙用を見ることが出来、有欲であれば道のかたはししか見ることが出来ない」という位の考えだったろうと思う。けれども、この二句を最初から本文にあったものとして通釈することになると、違った解釈を下さざるを得なくなる。(p.13)

 挿入として素直に解釈したのが小川で、挿入ではあろうけれども最初からあったかのように解釈したのが(その場合にも解釈の可能性はいくらもあるようだが)阿部・山本ということになる。
 しかし、それ以外の部分でも、両者の解釈は随分隔たっており、もし同一の人がそれぞれの訳文しか読まなかったとしたら、それぞれに全く違ったインスピレーションを得ることになるのではないかと思う。


【家庭菜園】
 8月9日の秋キュウリを終わりにする。
 結局一度も収穫しなかった。


 5月18日と6月11日に植えたゴーヤーを終わりにする。
 2本苗を貰って3本育てたせいもあるけれど、本当によく収穫した。今年の MVP と言ってもよい。


 6月6日のオクラを終わりにする。


 6月30日のツルムラサキを終わりにする。
 1株しか育たなかったが(3箇所に4粒ずつ種を撒き、発芽したのが2つだけだった。発芽した内、1本はネキリムシに倒された)、よく収穫した。来年は3株は欲しい。


 寝かせておいたサツマイモを食し始める。
 豊作とは行かなかったけれど、味はなかなかよい。


 畑に残っているもの。
 トウガラシ。勢いは落ちたが、まだ収穫が続く。
 カブ。育たなかったものも多いが、残った内半分を収穫した。
 ダイコン。そろそろ収穫を始めてもよさそう。大きくならないものもある。
 ニンジン。来月に入ったら収穫予定。
 ホウレンソウ。収穫は出来なさそう。


 もう作物の種を撒いたり、苗を植えたりはしないが、エンバク、クリムソンクローバ、ライムギの種は撒けそうなところを見つけてはちょこちょこと撒いている。
 まだ発芽する。越冬できるかどうかは分からない。