本の覚書

本と語学のはなし

自らは消えて行かなければ【ラテン語】

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

  • 作者:Augustine
  • 発売日: 1912/01/15
  • メディア: ハードカバー
告白録 (キリスト教古典叢書)

告白録 (キリスト教古典叢書)

 アウグスティヌス『告白』第4巻第10章16より。

Sic est modus eorum. tantum dedisti eis, quia partes sunt rerum, quae non sunt omnes simul, sed decedendo ac succedendo agunt omnes universum, cuius partes sunt. ecce sic peragitur et sermo noster per signa sonantia. non enim erit totus sermo, si unum verbum non decedat, cum sonuerit partes suas, ut succedat aliud.

これがものの存在の仕方です。
このような存在の仕方を
あなたはこれらのものに
与えられました。


これらのものは
全て同時に存在するのではなく、
消えたり、生じたりしながら、
それぞれの部分が、
全てまとまって全体をなすような、
そのようなものの部分です。


そうです、
われわれの話も、
音を出す記号によって
そのような経過を辿ります。


もし、一つの言葉が、
自らの音を出すとき、
別な言葉が続いて来るように、
自らは消えて行かなければ、
話は全体として
成り立たないでしょう。(p.121)

 私はどちらかと言うと宮谷宣史の語学力を高く評価してはいないのだけれど、著作集の方の翻訳者も宮谷宣史であった。ちょっと比較したところでは、漢字と仮名の選択で若干の違いはあるものの(「全て」と「すべて」など)、同じ訳のようである。
 同じ教文館だから当然というわけではない。『神の国』は著作集とキリスト教古典叢書とで訳者が異なる。可能であれば、出来映えがどうなるかはともかく、いろんな人に訳してもらいたい。
 評判が良いのは山田晶訳である。語学的に正確という意味かどうかは知らないが、いずれ購入したい。


 引用したところは、別にけちをつけるほどではないけれど、時間論に発展しそうな哲学的な香りもする文章なので、もう少し原文の感触を残して欲しい。


This is the way of them. Thus much hast Thou given them, because they are parts of things, which exist not all at the same time, but by departing and succeeding they together make up the universe, of which they are parts. And even thus is our speech accomplished by signs emitting a sound; but this, again, is not perfected unless one word pass away when it has sounded its part, in order that another may succeed it.

 電子書籍で英訳全集を買ったので、その訳を載せておく。
 ラテン語を英語にするのは、ラテン語を日本語にするより遙かに容易な作業であろうけれど、英語が達者な人に英訳からの重訳を依頼した方が、ずっと原文に近い訳ができあがるのではないだろうか。
 これはほとんど原文通りの訳である。強いて言えば、最後の ”when it has sounded its part” の ”part” が原文では複数形になっていることくらいだ。一つの語といえども幾つかの部分から成り、その部分部分も発音されては次に道を譲る。こうして一つの語が発音されると、次の語のために道を譲り、これを繰り返して発話の全体を構成するのである。ここはやはり複数形で訳して欲しいところである。


【語学】
 各言語に専門を、という運動に一応の結論が出た。
 中心は聖書学とキリスト教思想であるから、近代語の専門はあくまで趣味程度のものであるべきだが、時にそれらが主のように熱中することもあるだろう。


ヘブライ語旧約聖書
 全巻は読めない。好みのものを可能な限り読み進める。
 アラム語が必要な箇所を読むときには、アラム語を学ぶ。


ギリシア語:新約聖書
 全巻読破を目指す。


ラテン語アウグスティヌス
 原典で読むのは『告白』と『三位一体論』と『神の国』。
 翻訳では全著作を読む。


●ドイツ語:ニーチェ
 私が持っている全集には白水社版が対応しているはずである。両者を読み込む。
 ニーチェニーチェ自身に語らせる方がよく、解説書にはあまり手を出さない。


●フランス語:フローベール
 原文で読むのは旧プレイヤード版に収められている主要7作品。
 翻訳の全集に目を通し、興味を引くものがあれば、電子書籍で原典に当たる。


●英語:オースティン
 書簡も含め、全著作を読む。
 翻訳も参考書も多い。ただし、映像作品にまで手を出さないこと。
 サブとして、シャーロック・ホームズとブラウン神父シリーズを原文でも読破したい。


●日本語:?
 もし余裕があるなら、古典文学、道元森鷗外などが候補となる。
 恐らく外国語だけで手一杯だろう。何となれば、上記の他に、ドイツ語とフランス語と英語でニュースを聞き、フランス語と英語で時事雑誌を読み、英語で(時にフランス語でも)映画やドラマを見なくてはならないからだ。


【家庭菜園】
 ミニトマトは実の皮もざらざらして固くなってきた。
 葉を取り除いてゴーヤーにその場を明け渡す。葉にもゴーヤーのつるがかなり巻き付いていたので、なかなか大変な作業であった。


 ゴーヤーは人にあげるか佃煮や甘納豆に加工されるので、最初の収穫以来ゴーヤーチャンプルーを食べたことはない。
 オクラは1本ずつしか採れないので、納豆に入れられたもの以外食べたことがない。