本の覚書

本と語学のはなし

わがすべてはこよなき解毒剤【英語】

エマ (中公文庫)

エマ (中公文庫)


 ジェイン・オースティン『エマ』を中公文庫の阿部知二訳で読んでいる。
 第9章には謎(charade)が集められていて(オースティン自身、優れたシャレードづくりであったようだ)、先ずはこんなものが紹介されている。

わが第一のものは悩みを意味し
 わが第二のものはそを感ずるさだめにあり
わがすべてはこよなき解毒剤
 その悩みをやわらげいやす―― (p.101)*1

 答えは載っていない。注釈も付いていない。
 そもそも我々にはルールも分からないのだが、次のシャレードをエマが解説してくれるので、そこで漸く、単語を2つに切り離し、「わが第一のもの」がその前半部分の音の表す意味、「わが第二のもの」が後半部分の音の表す意味、「わがすべて」が分割する以前の単語の意味を示しているのだと気づく。


 便利なもので、原文はネットで直ぐに見つかる。

My first doth affliction denote,
 Which my second is destin'd to feel
And my whole is the best antidote
 That affliction to soften and heal.

 この文章をそっくりコピペして検索すれば、解答も直ぐに見つかる。
 「悩み」を表す前半部分は woe、「そを感ずるさだめにあ」る後半部分は man のことで、これをつなげてみれば、「その悩みをやわらげいやす」「こよなき解毒剤」こそは woman であるということになる。


 エマが解説してくれたもう一つのシャレードは次の通り。

――嬢によせる
 謎とき詩
わが第一のもののしめすは、地上の王侯たちの
 富と華麗! その栄耀と安楽
ことなる人の盛容を、わが第二のものはしめす
 あれに見よ! 海原の王なる彼を!


さあれ、ああ! その両者相結ぶとき、いかなる敗北に立ち至ることよ!
 人の世の誇りなる力と自由、すべては消え失せ
大地と大海の王なる彼も、奴隷と身を屈す
女性、美わしき女性のみ君臨す
汝が当意即妙の機知は、ただちに言葉を見出し
かのやさしき瞳に、承諾の色のかがやかんことを!(p.102-103)

To Miss—


CHARADE.


My first displays the wealth and pomp of kings,
 Lords of the earth! their luxury and ease.
Another view of man, my second brings,
 Behold him there, the monarch of the seas!


But ah! united, what reverse we have!
 Man's boasted power and freedom, all are flown;
Lord of the earth and sea, he bends a slave,
 And woman, lovely woman, reigns alone.


Thy ready wit the word will soon supply,
 May its approval beam in that soft eye!

 前半は宮廷 (court)、後半は船 (ship) を表し、「その両者相結ぶとき」、それは求婚 (courtship) を意味する。
 私は『エマ』をこれまでに読んだことはないので結末を知らない。だが、最もありそうなベタな展開を想像するに、エマはこの謎の半分は理解したが、半分を誤解していたのではないかという気がする。つまり、最初と最後の解釈において、決定的に間違っているのではないか。
 仮にそうだとすれば、それにも関わらずずっと読者を獲得し続けるオースティンの力量は馬鹿に出来ないものなのだろう。


【家庭菜園】
 隣家の室外機の温風が当たるトウガラシは(低いブロック塀を越えて吹き込んでくる)、生育が悪く、ほとんど実を付けない。
 たくさん苗を貰った。他のところから採れるだけでも、収穫は十分すぎるほどである。トウガラシの先にある中玉トマトは、風に当たってはいるはずだが、幸い影響を受けていないようだ。しかし、来年は対策を考えなくてはならない。
 板を設置するのは見栄えがよくないし、嫌味でもある。ソルゴーを植えたのでは、小さな菜園にそぐわないだろう。
 手元にある種を使うなら、ライムギである。今まで試しに播種したところでは、それほど丈は伸びないし、直ぐに倒伏する。頼りないようであるが、支柱とひもで囲ってしまえば、何とか緑の防風壁を作ることができるかもしれない。


 9日に播種し、23日に移植した4本の秋キュウリの内、2本がどうやら活着してくれたようだ。
 苗はまだ小さいが、キュウリは直ぐに大きくなる。支柱を刺しておいた。


 6月6日定植のミニトマトはもう先が見えてきた。
 一番の失敗の原因は、貰ったゴーヤーの苗を植える場所がなくて、仕方なくトマトの支柱を支える棒に誘引したことである。これによって、ゴーヤーの生長とともに、トマトには日光と風が不足し、葉っぱにカビが繁殖するようになってしまった。
 モロヘイヤとトウガラシの苗はありがたかったが、ゴーヤーは自分で苗を買っていたし(今大量に結実しているのはこの苗の方である)、貰うべきではなかった(私が貰ったわけではないけれど)。

*1:私の手元にあるのは旧版であり、新版とはページに若干のずれがあるようだ。