本の覚書

本と語学のはなし

いと高き処には栄光、神にあれ 地には平和、主の悦び給ふ人にあれ【ギリシア語・ラテン語】

聖書 -原文校訂による口語訳

聖書 -原文校訂による口語訳

 ルカによる福音書2章8節から14節。邦訳はフランシスコ会訳。

8 Καὶ ποιμένες ἦσαν ἐν τῇ χώρᾳ τῇ αὐτῇ ἀγραυλοῦντες καὶ φυλάσσοντες φυλακὰς τῆς νυκτὸς ἐπὶ τὴν ποίμνην αὐτῶν. 9 καὶ ἄγγελος κυρίου ἐπέστη αὐτοῖς καὶ δόξα κυρίου περιέλαμψεν αὐτούς, καὶ ἐφοβήθησαν φόβον μέγαν. 10 καὶ εἶπεν αὐτοῖς ὁ ἄγγελος· μὴ φοβεῖσθε, ἰδοὺ γὰρ εὐαγγελίζομαι ὑμῖν χαρὰν μεγάλην ἥτις ἔσται παντὶ τῷ λαῷ, 11 ὅτι ἐτέχθη ὑμῖν σήμερον σωτὴρ ὅς ἐστιν χριστὸς κύριος ἐν πόλει Δαυίδ. 12 καὶ τοῦτο ὑμῖν τὸ σημεῖον, εὑρήσετε βρέφος ἐσπαργανωμένον καὶ κείμενον ἐν φάτνῃ. 13 καὶ ἐξαίφνης ἐγένετο σὺν τῷ ἀγγέλῳ πλῆθος στρατιᾶς οὐρανίου αἰνούντων τὸν θεὸν καὶ λεγόντων·
  14 δόξα ἐν ὑψίστοις θεῷ
   καὶ ἐπὶ γῆς εἰρήνη ἐν ἀνθρώποις εὐδοκίας.

8 Et pastores erant in regione eadem vigilantes et custodientes vigilias noctis supra gregem suum. 9 Et angelus Domini stetit iuxta illos, et claritas Dei circumfulsit illos, et timuerunt timore magno. 10 Et dixit illis angelus : « Nolite timere ; ecce enim evangelizo vobis gaudium magnum, quod erit omni populo, 11 quia natus est vobis hodie Salvator, qui est Christus Dominus, in civitate David. 12 Et hoc vobis signum : invenietis infantem pannis involutum et positum in praesepio ». 13 Et subito facta est cum angelo multitudo militiae caelestis laudantium Deum et dicentium :
  14 « Gloria in altissimis Deo,
    et in terra pax in hominibus bonae voluntatis. »

8 さて、その地方では、羊飼いたちが野宿をして、夜通し羊の群れの番をしていた。 9 すると、主の使いが羊飼いたちにのそばに立ち、主の栄光が彼らの周りを照らし出したので、彼らはひどく恐れた。 10 み使いは言った、「恐れることはない。わたしは、民全体に及ぶ、大きな喜びの訪れを、あなた方に告げる。 11 今日、ダビデの町に、あなた方のために、救い主がお生まれになった。この方こそ、主メシアである。 12 あなた方は、産着にくるまれて、飼い葉桶に寝ている乳飲み子を見出すであろう。これが徴である」。 13 すると突然、み使いに天の大軍が加わり、神を賛美した。
  14 「いと高き天には、神に栄光
   地にはみ心にかなう人々に平和」。

 「主メシア」と訳されているところは、原文では「主なるキリスト」である。


 しばらくブログを放置していた。ちょっと近況を書いておく。
 町内の班の会計になって、9日にごく簡単な引継ぎが行われてから、全体の把握と表の作成に勤しんだ。集計表などはデータで引き継がれることはなく、毎年担当者が一から作り直しているようだ。
 しかも、後から過去の資料を貰って見てみると、昨年の担当者が大いにやり方を変えていることが分かったから、一応一昨年までの方式に従った表まで作ることにした。
 それが終わって、一段落した頃のことである。


 15日に突然父が他界した。
 最近確かに大分弱ってきていたが、弱っているなりにもまだ歩いてはいたし、食欲もあった。この日も昼まではちゃんと食事をとっていた。
 夕方、トイレの前でしゃがみ込み動けなくなった。ベッドに連れて行ったが、座ることもままならない。吐きそうになった。母が救急車を呼ぶ。
 救急隊は楽観視していたようだ。私も最初は点滴を打って帰宅するのだろうと考えていた。しかし、画像検査の時に嘔吐してから、ますます元気が無くなっていった。
 どうやら一年半前に発覚した動脈瘤が原因であるようだ。この件に関しては、既に結論が出ていた。リスクが大きすぎるので手術はしない。その時が来たらその時である。そして今、その時が来たのだ。
 入院することになった。看護師から入院手続きの説明を受け、書類を書き、病室に戻ってみると、もう意識はなかった。ほとんど痛みを感じなかったらしい。眠るような最期であった。


新約聖書 訳と註 第二巻上 ルカ福音書

新約聖書 訳と註 第二巻上 ルカ福音書

  • 作者:田川 建三
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本
 さて、冒頭に引用したのは、マタイとは大いに異なるキリスト誕生にまつわる一挿話である。
 田川建三の言うところを聞いてみよう。

『イエスという男』にも書いたけれども、マタイ福音書のイエス誕生の場面と比べてみるがよい。そちらは王者の誕生、東方から、つまり魔法の国から、三人の博士が、おそらくは豪華な衣装に身をつつんで、我々庶民は生涯眼にすることもないような黄金、財宝を捧げにやってくる。そちらでは赤ん坊のイエスは家畜小屋で飼葉桶に寝かせられていたわけではない。れっきとした「家」に宿泊していた。それをルカは、泊まる宿もなく、お祝いに来てくれたのも野で羊の群れを守る羊飼いだけだった、という場面に描いた。しかし、詩的にはまことに豪華な場面である。天の軍勢が空にあふれて、すばらしい大合唱を歌う。それは、此の世全体に平和を祈る合唱である。しかしそれを聞くのは、夜を徹して寒い野原で羊を守っていた羊飼だけだった。苦労して働いている者のところにだけ、このすばらしい天の合唱が聞こえてくる・・・・・・。イエスの誕生を祝う場面として、こういう場面を構想しえた詩人は、やはりたぐい稀な詩人であったのだ。(p.127)

 ルカの描く場面だけを絵画にした画家は、田川の知る限りたった一人であるという。マティアス・グリューネヴァルトである。