本の覚書

本と語学のはなし

旧約聖書と新約聖書の神の同一性【ドイツ語】

Das Neue Testament

Das Neue Testament

  • 作者:Gerd Theissen
  • 出版社/メーカー: Beck C. H.
  • 発売日: 2015/06/01
  • メディア: ペーパーバック
新約聖書―歴史・文学・宗教

新約聖書―歴史・文学・宗教

Woran war das NT erkenntbar? Wir finden in allen christlichen Handschriften zwei Besonderheiten: Alle Handschriften bestehen (mit wenigen Ausnahmen) nicht aus Rollen, sondern aus Codeces. Die Christen verbreiteten ihre Shriften in einer für die damalige Literatur noch unüblichen Form. Man könnte darin eine bewusste Abgrenzung vom Judentum sehen, dessen heilige Schriften Rollen waren. Zweitens zeichneten sich alle christlichen Handschriften der Bibel durch Abkürzungen vor allem für die nomina sacra aus. ΘΕΟΣ («THEOS» = Gott) wurde danach als ΘΣ abgekürzt usw. Diese Abkürzungen finden sich im AT wie im NT. Man könnte sie als Absage an Markion interpretieren. Schon in der Schreibung der Namen wurde die Einheit des Gottes im Alten und Neuen Testament hervorgehoben. Man betonte die Nähe zum AT und zum Judentum. (p.118)

新約聖書は何を手がかりにして、そうと判別されたのか。キリスト教徒によるすべての手写本には二つの特殊な点がある。まず、すべての手写本が(僅かな例外はあるが)巻物ではなく、まさに写本(コーデックス)の形になっていることである。キリスト教徒は自分たちの文書を当時の文学には普通ではなかった形で流布させたのである。この点には、自分たちの聖書を巻物で伝承したユダヤ教に対するキリスト教徒の側での意識的な自己限定が認められてよいであろう。第二に、キリスト教徒による聖書のすべての手写本は(旧約聖書のものも含めて)単語の省略表記を特徴としている。しかもそれは、とりわけ、神、キリスト、霊などを表すいわゆる聖なる語 (nomina sacra) を包括している。たとえば、神を表す ΘΕΟΣ (THEOS) はΘΣ (THS) と略記されたという具合である。この略記法は旧約聖書にも新約聖書にも発見される。これはマルキオンに対する拒否回答と解し得るだろう。すでに名前の表記のレベルで旧約聖書新約聖書の神の同一性が強調されたのである。その限りここでは、旧約聖書ユダヤ教への近さが強調された。(p.264-5)

 ドイツ語と日本語が若干異なるのは、大貫がタイセンから直接手渡された増補改訂版を訳しているからである。ただし、省略表記に上線を引いていない理由はよく分からない。多分日本の出版事情によるのだろう。


 最初に聖書を一つの書物としてまとめたのはマルキオンだと言われている。彼はパウロの書簡の中からパウロの真筆と信じる十通のみを取りあげ、福音書パウロの弟子であるルカのもののみを認めた。さらにそこから、後に付加されたと考えられるユダヤ主義的夾雑物を取り除いた。これがマルキオンの聖書である。
 マルキオンにとって、旧約の神はいわゆるデミウルゴスであり、新約の至高の神とは別のものである。彼はグノーシス主義を奉じていたのである。
 しかし、このマルキオンの活動が触媒となって、正統派の側においても正典結集の気運が高まった。それはユダヤ教との断裂と連続をアンビバレントに包含するものであったようである。


 やることを減らそうと思いつつ、ドイツ語とラテン語でもタイセンとアウグスティヌスを再開してしまった。