本の覚書

本と語学のはなし

愛せざるを得ない【ラテン語】

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

告白 上 (岩波文庫 青 805-1)

告白 上 (岩波文庫 青 805-1)

 アウグスティヌス『告白』第4巻第2章2より。

in qua sane experirer exemplo meo, quid distaret inter coniugalis placiti modum, quod foederatum esset generandi gratia, et pactum libidinosi amoris, ubi proles etiam contra votum nascitur, quamvis iam nata cogat se diligi.

わたしはかの女を知って、子を産むために結ばれる婚姻の契約と、情欲的な愛による結合との間に何という大きな相違があるかを、ほんとうに身をもって経験した。愛欲で結ばれた場合、子は親の意に反して生まれるのであるが、生まれたからには愛せざるを得ない。 (p.93)

 「愛せざるを得ない」というところの英訳。

yet being born, they even compel us to love them.


告白録 (キリスト教古典叢書)

告白録 (キリスト教古典叢書)

 このあたりの事情について、宮谷宣史の訳書の注釈を書き抜いておく。

(5) アウグスティヌスは371年、ある女性(名前は明らかにされていない)と同棲し始める。正式な結婚ではなかったが、真面目な関係で、15年間共に暮らす。
(6) 372年、アウグスティヌスは同棲していた女性との間に男児を得、18歳で父親になる。名前はアデオダトゥス。この箇所からも分かるように、彼はその誕生を望んでいなかったが、生まれてからは愛して育てる。アデオダトゥスは390年、18歳で亡くなる。その年、アウグスティヌスは息子との対話を本にまとめて出している(『教師』参照)。(p.536)

 アデオダトゥスという名前は、神から与えられたものという意味であろう。しかし、この頃のアウグスティヌスはまだキリスト教に回心していたわけではなく、修辞学を教えるマニ教徒であった。