本の覚書

本と語学のはなし

クリスティーナの好きなこと 名作映画完全セリフ集/高瀬文広監修

クリスティーナの好きなコト (名作映画完全セリフ集スクリーンプレイ・シリーズ)

クリスティーナの好きなコト (名作映画完全セリフ集スクリーンプレイ・シリーズ)

 上級。ちょっとお下品なラブ・コメディー。
 翻訳や注釈は信用しすぎない方がいい。例えば、牧師*1が結婚式を執り行う際のセリフ。

PRIEST: into inadvisably and with love… (p.118)

 「inadvisably」という副詞に関して、「ここでは名詞的に使われている」などと驚くべき解説をしている。「into」という前置詞の後に続いているから、名詞でなくては辻褄が合わないと思って、そのような文法をでっち上げたのだろう。しかし、辻褄が合わないのであれば、先ずは「into inadvisably」と捉える単純だけれど不自然な読みを疑わなければならない。
 牧師のセリフは他の登場人物の会話によってぶつ切りにされている。一つ前のセリフと次のセリフをつなぎ合わせると、次のようになる。

And therefore, is not by any to be entered… (p.116)
into inadvisably and with love… (p.118)
lightly. (p.118)

 主語は更に前を見なくてはならないが、結婚のことである。
 「into」は「enter」と結びついて句動詞を形成し、「(契約などを)結ぶ」という意味になる。ここでは受動態であるから、その後に目的語は続かない。「inadvisably(愚かに)」は句動詞全体を修飾する副詞である。
 結婚は神が結びつけるものである。思慮を欠き、欲望に従って*2軽々に結ばれるべきものではない。

*1:本には牧師と書いてあるが、映像を見るとカトリックの神父ではないかという気がする。

*2:司式の例文を検索してみたところ、「with love」がつかない方が普通のようだが、この文脈では「欲望」と解釈するべきか?