本の覚書

本と語学のはなし

編集史とは何か 聖書学の基礎知識/ノーマン・ペリン

 様式史はそれぞれの生活の座において発展し、変更を加えられ、あるいは新たに作られた伝承に着目するものであるが、編集史はそれらの伝承を素材としながら福音書という文学類型に編み上げていった福音書記者たちの、その編集手腕に潜む神学を明らかにしようとするものである。
 福音書記者は歴史家ではない。神学者なのである。


 しかし、伝承の背後に信仰があり、福音書文学の背後に信仰があるとしても、歴史上のイエスに迫ることはまったく不可能であり、歴史上のイエスなど無意味であると言ってよいだろうか。
 訳者の松永希久夫はあとがきで書いている。

エスの場合、確かに復活という出来事(啓示の光)がなければ再解釈(信仰)は起らなかった。しかし、同時に復活の光に照らし出された新しいイエス像がナザレ人イエスの至当なる理解であると判断させた彼の生きざま死にざま(歴史的存在)が先行していて初めて、啓示は内実を伴うのである。(p.195)

 ノーマン・ペリンはまだ編集史という方法論が出来たばかりの頃の人であり、ブルトマンに傾倒していた人でもある。乗り越えていくべきものがあるようだ。