チャーリーズエンジェル (スクリーンプレイ・シリーズ―名作映画完全セリフ集)
- 発売日: 2001/08/01
- メディア: 単行本
I must have the heart of a rhino.
セリフ集では直訳してくれている。
私はサイの心に違いないわ。
字幕の方はと言うと…
恋多き私は 心が鉄ね
「恋多き」は言外の意味を付け足したものであって、実際にはそういうことは言っていない。「サイ」を「鉄」に変えたのは、日本語として通じやすいようにしたのだろう。
その直後、0:13:00あたりのボズリーのセリフ。
Mes anges, these little hurts will heal.
エンジェルの諸君、君たちの傷は回復する。
「mes anges」は「my angels」を意味するフランス語。ここに何の注釈も付けないのは不可解であるが、ともかくセリフ集ではその通り訳している。
一方、字幕は「メ・ザンジュ」と言い出すタイミングで、
心の傷は――
という文字を出し、「ディーズ・リトル・ハーツ…」で
いつか癒える
となる。フランス語を知らない人には、チンプンカンプンだろう。
ではセリフ集が万能かと言えばそうでもない。「メ・ザンジュ」もそうだが、注釈はまったく痒いところに手が届かない。翻訳は意訳と直訳の間くらいの微妙な日本語が多いし、必ずしも正確ではなさそうだ。
ボズリーの次のセリフ。
And at crunch time, your hearts will be so buff, you will be able to clean and jerk his love three sets, ten reps each.
危機に際しても、君たちの心がとても強ければ、彼の愛をきれいにしてジャークを10回ずつ3セットすることができるだろう。
「彼の愛をきれいにしてジャークを」なんて支離滅裂な日本語に出会ったら、大概それは誤訳である。辞書を引けば、「clean and jerk」でウェイト・リフティングの一連の動作であることは直ぐに分かる。バーベルを肩まで上げるのがクリーン、そこから頭上に上げるのがジャークだそうである。
ちなみに、字幕では…
そしたらロマンスの危機だって乗り切れる
恋のダンベル上げも楽勝
10回ずつ 3セットでも
字数の制限もあるだろうし、そのまま訳すことはできないだろうが、ダンベルではちょっと軽くなりすぎてしまった?