本の覚書

本と語学のはなし

Mes anges【英語】

チャーリーズエンジェル (スクリーンプレイ・シリーズ―名作映画完全セリフ集)

チャーリーズエンジェル (スクリーンプレイ・シリーズ―名作映画完全セリフ集)

 0:12:53あたりのナタリーのセリフ。

I must have the heart of a rhino.

 セリフ集では直訳してくれている。

私はサイの心に違いないわ。

 字幕の方はと言うと…

恋多き私は 心が鉄ね

 「恋多き」は言外の意味を付け足したものであって、実際にはそういうことは言っていない。「サイ」を「鉄」に変えたのは、日本語として通じやすいようにしたのだろう。


 その直後、0:13:00あたりのボズリーのセリフ。

Mes anges, these little hurts will heal.

エンジェルの諸君、君たちの傷は回復する。

 「mes anges」は「my angels」を意味するフランス語。ここに何の注釈も付けないのは不可解であるが、ともかくセリフ集ではその通り訳している。
 一方、字幕は「メ・ザンジュ」と言い出すタイミングで、

心の傷は――

という文字を出し、「ディーズ・リトル・ハーツ…」で

いつか癒える

となる。フランス語を知らない人には、チンプンカンプンだろう。


 ではセリフ集が万能かと言えばそうでもない。「メ・ザンジュ」もそうだが、注釈はまったく痒いところに手が届かない。翻訳は意訳と直訳の間くらいの微妙な日本語が多いし、必ずしも正確ではなさそうだ。
 ボズリーの次のセリフ。

And at crunch time, your hearts will be so buff, you will be able to clean and jerk his love three sets, ten reps each.

危機に際しても、君たちの心がとても強ければ、彼の愛をきれいにしてジャークを10回ずつ3セットすることができるだろう。

 「彼の愛をきれいにしてジャークを」なんて支離滅裂な日本語に出会ったら、大概それは誤訳である。辞書を引けば、「clean and jerk」でウェイト・リフティングの一連の動作であることは直ぐに分かる。バーベルを肩まで上げるのがクリーン、そこから頭上に上げるのがジャークだそうである。
 ちなみに、字幕では…

そしたらロマンスの危機だって乗り切れる
恋のダンベル上げも楽勝
10回ずつ 3セットでも

 字数の制限もあるだろうし、そのまま訳すことはできないだろうが、ダンベルではちょっと軽くなりすぎてしまった?