本の覚書

本と語学のはなし

十絃の琴【ラテン語】

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

Confessions, Volume I: Books 1-8 (Loeb Classical Library)

  • 作者:Augustine
  • 発売日: 1912/01/15
  • メディア: ハードカバー
 せっかくなのでラテン語も。近代語はまたの機会に。


 アウグスティヌス『告白』3巻8章より。原文と服部英次郎訳(岩波文庫)。

haec sunt capita iniquitatis, quae pullutant principandi et spectandi et sentiendi libidine, aut una aut duabus earum, aut simul omnibus, et vivitur male adversus tria et septem, psalterium decem chordarum, decalogum tuum, deus altissime et dulcissime.

これらは支配の欲、目の欲、官能の欲から生まれ出るものであり、あるときはそのうちの一つから、あるときは二つから、またあるときはそのすべてから生ずる不義である。それはもっとも高く、もっとも甘美な神よ、三絃と七絃からなる「十絃の琴」に、すなわちあなたの十戒にそむいておくる邪悪な生活である。

 「十弦の琴」という表現は、詩編33 :2、92 :4、144 :9などに見られるが、それが三弦と七弦に分けられているのは、十弦の琴を十戒にたとえ、十戒を神に関する最初の三戒と人間に関する後の七戒に分解しているのである。


 ところで、十戒の数え方はカトリックプロテスタントでは異なる。
 カトリックでは、以下のように区切る。

 1.わたしのほかに神があってはならない
 2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない
 3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ
 4.あなたの父母を敬え
 5.殺してはならない
 6.姦淫してはならない
 7.盗んではならない
 8.隣人に関して偽証してはならない
 9.隣人の妻を欲してはならない
 10.他人の財産を欲してはならない

 プロテスタントでは、二番目に偶像製作の禁止が来て(カトリックでは一番目に含む、もしくは気にしない)、以下番号が繰り下がり、カトリックの九番と十番をまとめて十番目としている。
 どういう事情でそうなったかは知らないが、その性格の違いは両者の教会を比較すれば一目瞭然だろう。