本の覚書

本と語学のはなし

グノーシスの神話/大貫隆訳著

 ナグ・ハマディ文書、マンダ教、マニ教の神話を、実際に文献に当たりながら確認していくスタイルの入門書。一次資料に触れることが目的であるから、予備知識を持っておいた方がよい。
 さらに進みたい人のためには、現在では岩波書店からナグハマディ文書の翻訳が刊行されている。私も「聖書外典偽典」シリーズを終えたら読むつもりでいる。


 グノーシス主義は、人間は本来神であるとする、絶対的人間中心主義を特徴とする。現実の世界は課題とはならない。本来の自己という光に目覚めて救済される時、これを幽閉していた闇の現実世界は滅び去ることになるだろう。
 グノーシス主義を論駁しようとした古代キリスト教の弁証家たちが、必ずしもフェアであったとは言えないかもしれないが、「彼らがグノーシス主義の脅威に逆らって、目の前の現実の世界を放棄できない課題として受け取り続けた真摯さを否定することはできない。しかも、それはただ人間にとってだけではなく、神自身にとっての課題であるというのである」(p.321)。
 我々は常に「新約聖書そのもののメッセージまで回帰し、グノーシスの世界観と突き合わせながらそれぞれを批判的に読むこと」(p.322)を自らに課していかなくてはならない。

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