本の覚書

本と語学のはなし

新約聖書の本文研究/B. M. メツガー

 元は緒方さんが所有していた『新約聖書の本文研究』を読了。たぶん神学校か神学部の授業で使ったのだろう。先生が言ったことをメモした感じの書き込みがいくつかあった。
 なぜこの本を売ったのだろう。キリスト教を学問的に学ぶことを諦めたのか、それとも彼/彼女の聖書信仰がこの本のような聖書の取り扱いを拒否したのだろうか。


 聖書のオリジナルは存在しない。多数の写本があるだけだ。しかもそれらは互いに異なっており、今となってはオリジナルを完全に復元することもできない。だが、おおむねオリジナルであろうというところに近づけることはできる。それが本文批評という学問である。
 本文批評を専門にするのはかなり難しいことだが、しかし、ギリシャ語で聖書を読むなら、少なくともギリシャ語聖書の欄外に記された膨大な異読を、自分でもある程度は評価することができなくてはならない。
 この本はそのための基礎知識を与えてくれる本だが、どうだろう、田川建三の『書物としての新約聖書』の方が読みやすいかもしれない。ただし、田川の本が扱う範囲はこの本より広く、かつ田川がかなり饒舌でもあるので、そうとう分厚くなってしまっている。

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