- 作者:兼好法師
- 発売日: 2015/03/25
- メディア: 文庫
しかし、今読んでも昔のようにため息をつくようなことはない。保守的すぎるし、中央の上層を偏重しすぎるし、無常迅速であることを頻りに説きつつそのように生きていたとばかりも言えないようだし、要するに「法師」として今の私が好むようなタイプではないのだ。
たぶん通読は今回が最後になるだろう。
第八四段
法顕三蔵の、天竺に渡りて、故郷の扇を見ては悲しび、病に臥しては漢の食を願ひ給ひけることを聞きて、「さばかりの人、無下にこそ心弱きけしきを人の国にて見え給ひけれ」と人の言ひしに、弘融僧都、「優に情ありける三蔵かな」と言ひたりしこそ、法師のやうにもあらず、心にくく覚えしか。