本の覚書

本と語学のはなし

最終回【短歌の目】

 短歌の目は今月がとりあえずの最終回だそうです。私の短歌づくりも、たぶんこれが最後になります。
 それで今回はふざけることなく作ってみたのですが、宗教色が濃すぎるのでやっぱり参加はしないこととします。
 最近の心境で一首。

  ガタピシと満身軋む不惑である眼球めだまよ塵に恋せよ脳漿のう

12月のお題

1. ファー *1
ファーコート、皮を剥ぐこと。ハンバーグ、バラした肉を切り刻むこと。

2a. 蜜 *2
獅子に湧く蜜より甘く驢馬の骨より堅くその穿たれた眼に

2b. 密
ギリシャ語が秘密の呪文だったころ僕が世界を赦そうとした

3. LED
見上げれば LED ZEPPELIN 空に満ち鉛の海に YELLOW SUBMARINE

4. グレーゾーン
赤と黒のレゾンデートル見失いグレーゾーンに息をひそめる

5. くま
神様が飽くまで飲めと差し出した杯にあく穴の数かず

6. 石 *3
盲目の神の手を引く道端の石つぶたちが星をうつす夜

7. イエス *4
ガリラヤへイエスはぼくを拉っし去る無きに等しい僕になるため

8. 鐘 *5
黄昏の鐘が鳴るころアヴェ・マリアアヴェ・マリアだけつぶやいてみる

9. 氷
過ぎた日は氷の中に記憶され時おりひとつトンカチで割る

10.【枕詞】降る雪の *6
降る雪の消したいことは地球ごと寝る間に厚さ五寸を増して

短歌の目様

 本格短歌を楽しみたい方は短歌の目様へどうぞ。

*1:この手の主義者ではありませんが。

*2:士師記」13-16章、サムソンの物語を参照。

*3:学生時代にテレビで見たのは、たぶん石川県に伝わる「あえのこと」だと思うのですが、これこそ本当の神様の姿だと泣けてきた記憶があります。ただし、夜道は歩きません。たぶん。

*4:「マルコによる福音書」16章7節を参照。田川はイエスが「先に行く」のでなく「先導する」のだと考えています。

*5:晩鐘あるいはアンジェラスの鐘。カトリックはこれを聞き「お告げの祈り」を祈ります。本当は朝昼晩の3回ですが。

*6:道元「即身是仏」に「あるいは心を識得すれば、大地さらにあつさ三寸をます」という表現が出てきますが、ここでは飽くまでその表現を借りただけで、道元の思想とは全く関係ありません。