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本の覚書

本と語学のはなし

イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北/内藤正典

 日本の場合、第二次世界大戦における侵略行為の戦争責任を厳しく問われます。しかし中東やアフリカで現在もなお傷跡を残しているのは――いや、今も生々しく血を流しているのは、第一次世界大戦で負わされた傷なのです。イギリスやフランスは、第二次世界大戦ファシズムと戦ったため、第一次世界大戦での「罪」を追及されることを免れました。アメリカはナチズムファシズムから世界を解放した英雄となりました。
 しかし、イギリスもフランスも、中東を分割支配したこと、植民地支配をしたこと、その結果としてどれだけの血が流されたかについて、今もって謝罪したことはありません。これは重大な歴史の否認といわざるを得ません。(p.102-103)


 シャルリー・エブド襲撃事件や日本人人質殺害事件が起こったのが今年の初め。イスラムとはなんと恐ろしい宗教か。日本人の間にもようやくイスラム・フォビアがきざし始めた頃、この本は出版された。しかし、これらの事件を受けて急いで作られたわけではなく(内容や表記には粗製気味の感はあるけど)、したがって目の前に展開された、我々にとってあまりにショッキングな光景について、憤りを発し、あるいはなにか分析をしているというわけではない。
 今中東で起こっていること、そして全世界で起こりつつあることの背景にある、イスラムと領域国家の関係、領域国家をもたらした西欧の過去と現在、そこから生じた憎しみなど。そういうことを知ることなしに、イスラムを標榜する集団の最も過激な行動のみに目を奪われて、ただ問答無用の空爆ばかりを解決手段としても、結局何も生み出されないだろうということを、この本は語っているのである。

 はっきり書きましょう。中東・イスラム世界に起きている混乱に関する限り、アメリカに追随してはなりません。これまでにやってきたことが、あまりに杜撰で、かつ、成功していません。成功していないばかりか、中東のみならず、広く世界のムスリムの怒りを買っているからです。
 ですから集団的自衛権のもと、自衛隊が戦闘地域とその周辺へ出ていくのはリスクが大きすぎます。特に、今日のように、国家と国家ではない組織(イスラム国も世界の国家とは異質ですからこれに入ります)が戦う場合には、どこが戦闘地域になるかまったく分かりません。(p.78)

 平和ボケという非難は容易に想像できるところではあるが、著者は憲法九条の精神のみが有効であると考えるのである。

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