本の覚書

本と語学のはなし

新約聖書Ⅲ ヨハネ文書/新約聖書翻訳委員会訳

 ヨハネ文書に収められているのは、ヨハネ福音書ヨハネの手紙三通。これらは使徒ヨハネによって書かれたというわけではなく、またこれらが必ずしも同一の著者によって書かれたとは限らないのだが、おそらく同じ思想圏の中に生じた著作である。
 新約聖書にはもう一つヨハネの名を冠した著作として、ヨハネの黙示録があるけれど、こちらは上のヨハネ文書とは全く出自が異なるようである。

 福音書について少々。
 ヨハネ福音書はどうも話の流れがうまくないところがところどころある。これは綴じられず、ページ番号も付けられないまま、重ねられていたパピルス原稿が、何らかの原因で順番が入れ替わったのだ。すなわち現在のヨハネ福音書は乱丁本である。そう考える人もある。いや、一人の著者が主な部分を書き、同じ共同体に属する弟子か同僚が、残された資料を基に加筆して編集したのだ。その挿入が文脈に不整合をもたらしたのである。そう考える人もある。