本の覚書

本と語学のはなし

あさきゆめみし (5)/大和和紀

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

 柏木と女三の宮の間に不義の子が生まれ、柏木は死に、女三の宮は六条御息所の死霊のせいもあって出家し、残された不義の子・薫は源氏の子として育てられ、夕霧は柏木の妻で朱雀院の娘(つまり女三の宮の異母姉)に懸想してついに自分の嫁としてしまい、雲居の雁とは不仲になり、ああ紫の上が亡くなり、源氏は腑抜けになり、腑抜けになり、腑抜けになり、とうとう出家して、どうやら最後はなくなったらしい、ということを直接の描写はないながら明石の君がはっきりと感じ取る。


 『源氏物語』のテーマであったかどうかは知らないが、現代的に解釈し直された『あさきゆめみし』の場合には、女性の自由ということが大きなテーマであるには違いない。


 『あさきゆめみし』のタイトルの秘密は、最後に引かれたいろは歌にある。「色は匂へど散りぬるを、わが世誰ぞ常ならむ、うゐの奥山今日超えて」の後、普通であれば「浅き夢見じ、酔ひもせず」となるのだが、ここでは「あさきゆめみし……」となっている。あえて「し」に濁点を打たないのだ。
 「じ」なら否定の意思を表す助動詞「じ」の終止形、しかし「し」ならば過去を表す助動詞「き」の連体形である。常に出家への願望を持っていながら、夢の内に生きた源氏をよく象徴しているようである。
 ただし、『源氏物語』にいろは歌が載せられているわけではない。


 さて、一気に読むのはさすがに疲れるのだが、残りは宇治十帖編2冊であるし、このまま明日にも読み切ってしまおう。